最大心拍数:「220−年齢」は持久系アスリートで平均して低く出た。4375人のデータと自分の値を知る方法

スティーブン・セイラーのグループが、ランナー、自転車選手、トライアスリート4375人の実際の最大心拍数を計算式と比べました。計算式は平均でほぼ5~6拍低く見積もり、個人では15~20拍ずれることもあります。フィールドで自分の最大値を測る方法と、ラボのテストでも外れることがある理由を解説します。

最大心拍数:「220−年齢」は持久系アスリートで平均して低く出た。4375人のデータと自分の値を知る方法

先週、ランナーのSNSやコミュニティでまた最大心拍数が話題になっていました。最大心拍数はトレーニングで「伸ばす」ことはできず、年齢とともに下がっていく。これは事実です。しかしそこから、誤った実践的結論が導かれがちです。最大値が年齢で決まるなら、計算式で求めれば十分だ、というものです。ノルウェーの新しい研究は、心拍数でトレーニングする人にとって、この単純化がどれほどの代償になるかを示しています。

研究の内容

アグデル大学(ノルウェー)のアウスランド、ケレメン、そしてポラライズドトレーニングの提唱者のひとりであるスティーブン・セイラー(Frontiers in Sports and Active Living、2026年4月)は、世界中の持久系アスリートを対象にオンライン調査を行いました。

  • 信頼性の低い回答を除外した結果、4375人が残りました。自転車選手が42%、ランナーが27%、トライアスリートが15%で、ほかにボート選手やスキー選手も含まれます。
  • 平均年齢は43歳、競技歴は15年、週のトレーニング時間は約10時間です。
  • 参加者には、練習やレースで全力を出したときにこれまで見たなかで最も高い心拍数を答えてもらいました。
  • この「フィールドでの」最大値を、2つの古典的な計算式と比較しました。フォックスの式(220 − 年齢)と、タナカの式(208 − 0.7 × 年齢)です。

わかったこと

  • 実際の最大心拍数の平均は毎分183拍。タナカの式では平均178、フォックスの式では177でした。
  • どちらの式も最大値を系統的に低く見積もっていました。タナカの式で4.8拍、フォックスの式で5.8拍です。
  • 個人差は平均誤差よりはるかに大きく、参加者の95%で、タナカの式の誤差は**−18.5拍から+9.1拍**、フォックスの式では**−20.2拍から+8.6拍**の範囲でした。
  • 最大値と年齢の相関は強い(r = −0.60)ものの、年齢で説明できるのは個人差の約3分の1にすぎません。
  • 男女差は見られませんでした。
  • トレーニング歴が長いほど最大値は低くなっていました(r = −0.34)。ただし、トレーニング歴は年齢と強く結びついています。
  • 安静時心拍数は年齢とはほとんど関係がなく、週のトレーニング量が多い人ほど低くなっていました(r = −0.23)。

例を挙げましょう。45歳のランナーの場合、フォックスの式では175、タナカの式では約177になります。もし実際の最大値が190なら(これだけばらつきが大きいと、まったく珍しくありません)、計算式から求めた「閾値」ゾーン(最大値の約85~90%)は本来より10~13拍低くなります。本人は閾値で走っているつもりでも、実際には楽なテンポ走にとどまっているのです。

ラボのテストも万能ではない

トレッドミルでのVO₂maxテストは「ゴールドスタンダード」とされています。しかし著者らは、インゲルによる古典的な研究を引き合いに出します。1回の漸増負荷テストで得られるピーク心拍数は、最大努力の反復を行うプロトコルよりも5~6拍低く出るというものです。VO₂maxテストは、酸素摂取量が頭打ちになるか本人が続行できなくなった時点で終了します。心拍数が上限に達した時点ではありません。

最大値は定数ではなく、特定のプロトコルの結果です。ウォームアップ、疲労、モチベーション、暑さ、競技種目に左右されます。自転車ではふつうランニングより低く出ます。詳しくはランニングと自転車の心拍ゾーンの記事をご覧ください。

研究の限界

  • データはすべて自己申告です。どの機器で心拍を測ったかはわかりません。手首の光学センサーは心拍ではなくケイデンスを拾って、実在しない最大値を表示することがあります。この誤差についてはケイデンスロックの記事で解説しています。
  • サンプルはSNS経由で集められており、すべてのアスリートではなく、データ好きで意欲の高いアスリートが中心です。
  • 研究は横断研究です。トレーニングが最大値そのものを変えるかどうかには答えていません。「競技歴が長いほど最大値が低い」という関係は、ほぼ間違いなく、経験豊富なアスリートほど年齢が高いことで説明できます。
  • 競技成績やVO₂maxのデータがないため、市民アスリートと強い選手を区別できません。

どう活かすか

  • 計算式は出発点であって、答えではありません。 最大値に対するパーセンテージでトレーニングしているなら、10~15拍の誤差はすべてのゾーンをずらしてしまいます。
  • まず自分のデータを確認する。 過去半年のレースやきついインターバルでの最大値を見てみましょう。ただし胸ストラップのデータに限ります。光学センサーの単発のピーク、特にトレーニング開始直後のものは除外したほうがよいでしょう。
  • 著者らが提案するフィールドテスト:10~30分のウォームアップのあと、3~4分の全力走を2~3本、できれば上り坂で行います。そこで出た最も高い値が、実用上のあなたの最大値です。きつい週のあとではなく、疲れが抜けた状態で行いましょう。
  • 安全面。 最大努力のテストは、健康で、すでに高強度の運動に慣れている場合に限ります。初心者、危険因子のある40歳以上の人、胸の痛みや脈の乱れがある人は、まず検査を受けてください。
  • 1~2年に1回は測り直す。 最大値は年齢とともにゆっくり下がります。
  • 別の方法として、最大値ではなく乳酸閾値での心拍数を基準にゾーンを組む方法があります。多くの人にとってはこちらのほうが正確です。ゾーンの再計算はゾーンジェネレーターでできます。

要点

  • 持久系アスリート4375人で、「220 − 年齢」とタナカの式は最大心拍数を平均4.8~5.8拍低く見積もった。
  • 個人の誤差は下方向に最大15~20拍、上方向に最大9拍。ゾーンを取り違えるには十分な大きさ。
  • ラボでのVO₂maxテストも、最大値を5~6拍低く見積もることがある。
  • 最も信頼できるのは、しっかりウォームアップしたあとに胸ストラップをつけて全力走を繰り返す方法。

出典: Ausland Å., Kelemen B., Seiler S.「An exploratory study of maximal heart rate determination in endurance athletes: laboratory testing vs. field based」. Frontiers in Sports and Active Living, 2026;8:1806303. DOI: 10.3389/fspor.2026.1806303 · Tanaka H., Monahan K.D., Seals D.R.「Age-predicted maximal heart rate revisited」. Journal of the American College of Cardiology, 2001;37(1):153–156. DOI: 10.1016/S0735-1097(00)01054-8