一晩の徹夜でレースは台無しになる?サイクリストを対象にした実験が示したこと

26人のアマチュアサイクリストが25時間眠らずに過ごし、その後40分の運動と20分のタイムトライアルをこなした。何が低下し、何が保たれ、そしてなぜ普通の一晩の睡眠ですべてが元に戻ったのかを読み解く。

OM
Olga Marchenko

大事なスタートの前夜。早めに横になっても、頭の中ではスタートの手順が回り続け、窓の外ではホテルが騒がしく、眠りはいっこうに訪れない。朝になると、まったく眠れなかったような感覚。心当たりはないだろうか。そしてすぐにパニックが襲う。「もうダメだ、レースは台無し、調子も水の泡だ」。だが本当にそうだろうか。一晩の徹夜が、トレーニングやコースでの結果を本当に帳消しにしてしまうのか。European Journal of Applied Physiology に掲載された最新の研究がこれを直接検証した——その答えは、思っているより喜ばしいものだ。

何を調べたのか

研究者たちは 26人のアマチュアサイクリストとトライアスリート(男性、平均年齢約30歳、VO₂peak は 55 ml/kg/min 前後——しっかりしたアマチュアレベル)を集めた。参加者は睡眠遮断(SD)群と対照群の2つに分けられた。

実験は 3日間連続 で行われ、選手たちは毎日、同じプロトコルを固定ローラー上で実施した。

  • 40分間 の一定した中強度での走行;
  • その直後に——最大限の仕事量を出し切る 20分間のタイムトライアル(time-trial)。

日ごとの割り振りは次のとおりだった。

  • 1日目 — ベースライン測定。全員が普通に眠る。
  • 2日目 — SD群は 25時間連続 で眠らず、対照群はいつもどおり眠る。テストは徹夜明けに行われる。
  • 3日目 — 両群とも普通に眠る。これは「回復」測定で、遮断後に一晩の睡眠が何をもたらすかを見る。

これと並行して、EEG(脳波)、反応(精神運動覚醒度テスト)、眠気の程度、心拍、乳酸、主観的感覚を測定した。

結果

ここが最も興味深いところだ——その効果は選択的であることが分かった。

頭はダメージを受けたが、脚は受けなかった。 徹夜明けには眠気が明らかに増し、覚醒度が低下した(p < 0,05)。つまり脳は、睡眠不足に正直に反応した。

中強度の運動がよりきつく感じられるようになった。 遮断後の40分走行の間、主観的運動強度が上がり(RPE、p = 0,023)、Feeling Scale による主観的な調子が悪化した(p = 0,013)。要するに、同じ「楽な」負荷が、徹夜明けには明らかに消耗を感じさせるものになった。

一方、タイムトライアルは落ちなかった。 鍵となる発見はこうだ。20分タイムトライアルの結果に、睡眠遮断は有意な影響を与えなかった——最大テストでこなした総仕事量は変わらなかった。25時間の不眠にもかかわらず、身体は短く高強度の運動でいつものパワーを発揮できた。

生理は安定を保った。 心拍と血中乳酸は徹夜明けでも変化しなかった——身体は同じ「ハードウェア」で動いていた。

一晩の睡眠がすべてを直した。 回復のための一晩のあと、眠気も覚醒度も RPE も調子も 元の水準に戻った。普通の睡眠一回が、徹夜の影響を取り戻したのだ。

実践でどうするか

  • スタート前に眠れなくてもパニックにならない。 短く高強度の運動(そしてそれこそがレースの重要な局面の大半——アタック、フィニッシュ、タイムトライアルだ)は、実験では低下しなかった。ホテルでの落ち着かない一晩は、結果への死刑宣告ではない。
  • 努力を「頭の中で」準備する。 睡眠不足のあとにまず損なわれるのは、きつさの感じ方だ。いつものペースがより重く感じられる。スタートではそれを戦略に織り込もう——その日は「きつい」方向に嘘をつく感覚だけでなく、パワーの数値とプランを信じること。
  • 「前もって寝だめする」。 研究の論理は、理にかなった戦術を示唆している。スタート前の数日で睡眠を蓄えておくこと。一晩を「取り返そう」とするのではなく。回復のための一晩がすべてを正常に戻すのだから、前日までの良質な睡眠こそが安全の余裕になる。
  • 一時的な睡眠不足と慢性的なそれを分けて考える。 ここで検証されたのは、まさに 1回 の徹夜とその後の回復だ。何週間も1晩5時間の睡眠を続けるのとはまったく別物だ。一度きりの乱れは乗り越えられる。恒常的な睡眠不足は、別個の、はるかに深刻な話だ。

限界

この研究は小規模で範囲が狭い。26人の男性アマチュア、自転車のみ、最長20分の短いテスト。数時間に及ぶレースや、暑さと脱水のなかで身体がどうふるまうかは分からない。検証されたのは 完全な遮断(まったく眠らない)であり、よくある「2、3時間寝足りない」ではない。慢性的な睡眠不足、女性のサンプル、エリート選手は視野の外に残されている。そして固定ローラーの結果を実際の路上に当てはめるには、つねに慎重さが求められる。

要点

  • 一晩の不眠(25時間)は、鍛えたアマチュアの20分タイムトライアルの結果を 低下させなかった
  • 心拍と乳酸は変わらなかった——生理は「壊れ」なかった。
  • ダメージを受けたのは 感じ方 だ。眠気、覚醒度、そして中強度の運動のきつさの感覚。
  • 普通の一晩の睡眠 が、すべてを完全に元の水準へと戻した。
  • 実践的な結論:一度きりの悪い睡眠は破局ではない。前もって睡眠を蓄え、一晩の徹夜を慢性的な睡眠不足と混同しないこと。

出典:Gattoni C, Girardi M, Javadi AH, O'Neill BV, Marcora SM. European Journal of Applied Physiology, 2025. DOI: 10.1007/s00421-025-05908-w