レース中に吸収できる糖質量:60グラムと90グラムの法則
長いレースで補給スピードを制限するのは筋肉ではなく腸だ。トランスポーターの限界と、ランニング・バイク・トライアスロンに使える実践的なg/hの組み立てを解説する。
よくある光景だ。長いレースでアスリートがジェルを次々と流し込むのに、3時間目にはやはり「壁」に襲われ、しかも胃が重くなる。問題は筋肉の貪欲さではない。ボトルネックは腸だ。アスカー・ユーケンドラップの古典的な研究は、運動中に体が物理的にどれだけの糖質を取り込めるのか、そしてその上限をどう押し上げるかを明らかにしている。数字をひも解き、実際に使える組み立てに変えていこう。
なぜ上限は約60 g/hなのか
ドリンクやジェルの糖質は直接血中に入るわけではない。まず輸送タンパク質が腸壁を通して「くみ上げる」必要がある。グルコースの場合、その輸送体がSGLT1であり、処理能力に限界がある。
研究の重要な結論はこうだ。グルコースだけ(あるいは腸内でグルコースに分解されるマルトデキストリン)を摂ると、体はそれを毎分1 g以下——つまりおよそ60 g/hの速度でしか酸化できない。それ以上摂っても余りは吸収されず、消化管に留まって水を引き込む。だからゴロゴロ音や吐き気、下痢が起こる。まさにこの理由から、純粋なグルコースを1時間に80 g流し込むのは無意味で、むしろ有害だ。上限は同じなのだ。
90 g/hまで引き上げる方法
コツは、フルクトースには別の輸送体——GLUT5があることだ。これはSGLT1とは独立して働き、いわば血中への二本目の「パイプ」を開く。
グルコースとフルクトースを混ぜると、糖質の総酸化量は毎分1 gを大きく超える。実験では毎分1.26 gまで記録され、単一の糖源に比べておよそ75%多い。超長時間の運動での実用的な目安は約90 g/h。混合の最適比率はグルコース:フルクトース=2:1だ。
重要な点:これは「複数輸送性の糖質」でのみ成り立つ。形態はほとんど関係なく、ドリンク・ジェル・バーは同じように吸収される。データからのもう一つの朗報:吸収速度は体重に依存せず、トレーニングレベルとの関連も弱い。ランナーとサイクリストでもほぼ同じだ。つまり90 g/hはエリートの特権ではない。
あなたの距離には何グラムか
多ければよいわけではない。燃料の必要量は、意欲ではなく運動の持続時間とともに増える。文献からの目安:
- 〜45〜60分まで: 燃料としての糖質はほぼ不要。糖質溶液で口をすすぐだけで十分だ——脳は口の中の糖を「読み取り」、たとえドリンクを吐き出しても後押しをくれる。
- 1〜2時間: 少量の糖質でもすでに効果がある。最大量へ急ぐ必要はない。
- 2〜3時間: 実用域は**〜60 g/hまで**で、ここでは単一の糖源(グルコース/マルトデキストリン)でも足りる。
- 超長時間、〜2.5〜3時間を超える場合: 目安はより高く、約90 g/h。しかもグルコース+フルクトースの混合でのみ可能だ。
用量について別途:最大のパフォーマンス向上が見られたのは1時間あたり60〜80 gの糖質摂取のときだ。念のための注意:非常に低い強度で距離を進む場合、糖質の酸化は落ちるので、数字は下方に調整すべきだ。
腸を慣らす方法
腸の輸送体はトレーニングで鍛えられる。糖質を(トレーニング中も含めて)日常的に多く摂れば、その数は増え、同じ補給でもより多くの「外部」糖質を酸化できるようになる。腸は心臓や筋肉と同じく適応する器官なのだ。
初心者にありがちな失敗:
- レース当日に初めて最大量の補給を試す——消化管の反乱は確実だ。
- 「純粋な」グルコースにこだわって60 g/hで頭打ちになり、なぜ進まないのか首をかしげる。
- 暑さの中で水なしに濃縮ジェルを流し込む——吸収はさらに落ちる。
実践への落とし込み方
- 距離ではなく時間で計算する。 レースの所要時間を見積もって範囲を選ぶ:3時間までは60 g/h、超長時間なら90 g/hへ。
- 成分を確認する。 ラベルにはグルコース(マルトデキストリン)とフルクトースの両方が、およそ2:1の比率で記載されているべきだ。フルクトースなしでは60 g/hを超えられない。
- 胃を前もって鍛える。 長いトレーニングでは、レースで予定している補給の組み立てを、グラム数もタイミングもそのまま再現する。
- 段階的に増やす ——60から80〜90 g/hへ、一気にではなく数週間かけて。
- 水を忘れない。 濃縮された糖質は水分を必要とし、さもないと吸収が滞る。
要点
- 単一の糖源(グルコース)=上限は約60 g/h——輸送体SGLT1の限界による。
- グルコース+フルクトースの混合(2:1)は吸収を約90 g/hまで引き上げる(毎分1.26 g、+75%)。
- 用量は持続時間で: < 45〜60分なら口すすぎで十分、2〜3時間は60 g/hまで、超長時間は90 g/hまで。
- 最大のパフォーマンス向上は60〜80 g/hで得られる。
- 腸は鍛えられる: トレーニングで補給を練習し、量を前もって増やしておく。
- 吸収速度は体重に依存せず、競技種目やレベルにもほとんど左右されない。
出典:Jeukendrup — Carbohydrate intake during exercise. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4008807/