腸はどのように水・塩・糖質を吸収するのか:持久系栄養の生理学

なぜナトリウムが水の吸収を助けるのか、なぜグルコースとフルクトースを混ぜるのか、そして長いレースでお腹の不調はどこから来るのか——吸収の生理学を読み解きます。

MB
Maxim Belyaev

組成的に完璧な飲み物を飲んでも、腸がそれを吸収しきれなければ意味はない。水分は働く筋肉へ向かわず、お腹の中でチャプチャプと揺れているだけになる。吸収は「胃の魔法」ではなく、1時間以上走るすべての人が理解しておくと役立つ、きわめて具体的な生理学だ。ナトリウム・水・糖質がどうつながっているのか、そしてなぜそのつながりからスポーツ栄養のほぼすべてのルールが生まれてくるのかを見ていこう。

ナトリウムはグルコースと水を引き連れていく

小腸の主役となる働き手は、輸送タンパク質 SGLT1(ナトリウム・グルコース共輸送体)だ。これはグルコース(またはガラクトース)の分子を、2個のナトリウムイオンとともにでなければ捕まえず、腸細胞(エンテロサイト)の内部へ一気に引き入れる。これがいわゆる二次性能動輸送で、SGLT1自体はエネルギーを使わず、ナトリウムの勾配に「乗って」進む。

その勾配を作り出しているのは別のポンプ——細胞の反対側(基底外側)にあるナトリウム・カリウムATPアーゼだ。これがナトリウムを外へ汲み出し、内部で不足状態を保つことで、まさにこの濃度差がSGLT1の働きを可能にしている。

ここに水分補給の鍵が隠れている。ナトリウムとグルコースが細胞に入ると、それらを追って浸透圧の勾配に沿ってが引き寄せられる。簡単に言えば、水は塩についていく。純粋な水はゆっくり、しぶしぶ吸収される。だがナトリウムとグルコースを伴う水は、速く効率よく吸収される。だからこそ経口補水液には必ず塩と糖の両方が入っている。これはマーケティングではなく、SGLT1の仕組みを直接利用しているのだ。

なぜ「グルコース+フルクトース」のほうがうまくいくのか

この仕組みの中で、フルクトースは別の話だ。フルクトースはSGLT1ではなく、自前の輸送体GLUT5を通り、ナトリウムを介さない促進拡散で吸収される。細胞から血中へ出るところでは、グルコースもフルクトースも共通の輸送体GLUT2を使う。

実践的な結論は非常に大きい。どの輸送体にも処理能力の上限がある——「入り口の渋滞」だ。グルコースだけを流し込めば、SGLT1の天井にぶつかり、余った糖質はそのまま腸管腔に残る。ところがグルコースとフルクトースは別々の道を通る(それぞれSGLT1とGLUT5)ので、互いに邪魔をしない。両方の経路を並行して使うことで、体は全体としてグルコース単独よりも1時間あたり多くの糖質を吸収できる。ここから、グルコース(またはマルトデキストリン)にフルクトースを加えた「マルチトランスポータブル」なジェルやミックスという発想がすべて生まれている。

お腹の不調はどこから来るのか

ほとんどの栄養素は空腸(jejunum)で吸収される——ここが吸収の主戦場だ。十二指腸はどちらかといえば鉄・カルシウム・マグネシウム・脂溶性ビタミンを、回腸はビタミンB12と胆汁酸を担当する。だが糖質と水はまさに空腸の仕事であり、その能力は無限ではない。

レースで何がうまくいかなくなるのか:

  • 濃すぎる溶液。 飲み物が高張(少ない水に対して糖が多い)だと、浸透圧はあなたに不利に働く。水は内容物を薄めようと、体から腸管腔出ていく。結果は、重だるさ、ゴロゴロ音、下痢だ。
  • 単一輸送体の過負荷。 純粋なグルコースを一度に大量に摂ると、SGLT1が処理しきれず、吸収されなかった糖質が細菌の作用で発酵し、そこからガスやけいれんが生じる。
  • 鍛えられていない腸。 吸収は適応する機能だ。練習で一度も食べたことがなければ、スタート時点でシステムは負荷への準備ができていない。

実践への活かし方

  • ナトリウムを忘れない。 飲み物の塩は、汗での喪失分を補うためだけではなく、水とグルコースの吸収メカニズムそのものに関わる。ナトリウムのない水は吸収されにくい。
  • 糖質の供給源を混ぜる。 一種類の糖ではなく、グルコース/マルトデキストリン+フルクトースの組み合わせの製品を探そう——こうしてSGLT1の天井を回避する。
  • 濃度に気を配る。 溶液は等張に近く保つ(目安は糖質濃度 < 約8%)。濃すぎるジェルは水で流し込もう。
  • 腸を鍛える(gut training)。 長時間の練習では、レースで予定しているのと同じやり方で定期的に食べて飲もう。腸は適応する——輸送体の数も、耐性も増える。
  • 事前にテストする。 すべての製品は練習でのみ試す。レース当日は実験の場ではない。

まとめ

  • SGLT1 はグルコースを2個のナトリウムイオンとともに細胞へ引き入れる。そのためのエネルギーはナトリウム・カリウムATPアーゼが供給する。
  • 水はナトリウムとグルコースに浸透圧で従う——だから塩+糖は純粋な水より吸収され、水分を保持しやすい。
  • グルコースとフルクトースは別々の経路を通る(SGLT1とGLUT5)ので、その混合はグルコース単独より吸収がよい。
  • 吸収の主戦場は空腸であり、その処理能力には限界がある。
  • 消化管の不調は多くの場合、濃すぎる補給、過負荷、鍛えられていない腸から生じる——いずれも管理できる。

出典:NCBI Bookshelf — Physiology, Nutrient Absorption. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK597379/