塩はどれくらいが安全か:WHOのガイドラインと、アスリートにとって話がもっと複雑になる理由
WHOは1日5g未満の塩分を勧めていますが、暑さの中での数時間に及ぶレースでは、このルールは逆に働きます。心臓に負担をかけず、コースで痙攣を起こさずに、両方のアプローチをどう両立させるかを見ていきましょう。
私たちはほとんど考えずに料理へ塩を足しますが、やがて正反対の二つのアドバイスにぶつかります。医師とWHOは「塩を減らしなさい」と言います。経験豊富なウルトラマラソンランナーは、スタート前のブリーフィングで塩のカプセルを差し出し、「ナトリウムがなければ途中棄権することになる」と言います。どちらが正しいのでしょうか。奇妙なことに――どちらも正しいのです。ただ、これは同じ物差しでは測れない二つの異なるシナリオなのです。
WHOが勧める内容とその理由
成人向けのWHOの推奨はシンプルです。1日あたりナトリウム<2000 mg、これは塩<5 g――だいたい小さじ1杯分に相当します。2歳から15歳の子どもについては、エネルギー必要量を考慮して、この基準を下方に調整します。
ラベルを読むときに役立つ目安があります。塩1 g ≈ ナトリウム400 mg、つまり塩5 gがまさにあの2000 mgのナトリウムです。パッケージにはナトリウムのほうが記載されていることが多く、実際の量を過小評価しがちです。
問題は、実際には人々がはるかに多くの塩を食べているということです。WHOの推計によると、2021年の世界平均摂取量は**1日あたりナトリウム4278 mg(塩にして約11 g)**で、推奨量の2倍以上でした。そしてこのナトリウムのかなりの部分は、食卓塩ではなく加工食品――パン、ソーセージや食肉加工品、スナック、ソースから来ています。
なぜ過剰は危険なのか
慢性的なナトリウムの過剰は、何よりもまず血圧の上昇であり、それを通じて心血管疾患のリスクの増大につながります。WHOは、塩の高摂取を胃がん、肥満、骨粗しょう症、メニエール病、腎臓病とも関連づけています。
問題の規模は深刻です。WHOの推計では、2023年にはナトリウムの過剰摂取と関連する死亡が年間約170万人にのぼりました。しかも、塩の削減は公衆衛生にとって最も費用対効果の高い対策の一つで、投じた1ドルにつき少なくとも12ドルの見返りがあります。だからこそWHOは、集団の塩分摂取量を30%削減するという目標を掲げました(当初は2025年まで、期限は2030年まで延長されました)。
暑さの中のスポーツは別の文脈
さて、ここで一般的な推奨が黙っている重要なニュアンスです。「塩を減らしなさい」というアドバイスは、オフィスとソファ、そして適度な活動という、ごく普通の日を過ごす普通の人に向けられたものです。暑さの中での数時間に及ぶ負荷は、まったく別の生理現象です。
汗とともに、あなたは水分だけでなくナトリウムも失います。長い距離――マラソン、ウルトラ、自転車、トライアスロン――では、その損失は大きくなり得ます。とりわけ大量に、そして塩辛く汗をかく人ではそうです(衣類に残る白い跡がその特徴的なサインです)。この状況で純粋な水だけを飲み、ナトリウムを補わないと、血液は文字どおり「薄まり」ます。低ナトリウム血症――危険なほど低いナトリウム値が生じるのです。その症状(吐き気、意識の混濁、むくみ、痙攣)はコース上では厄介です。ふつうの脱水症状に似ているのに、対処法は正反対だからです。
核心となる考え方はこうです。WHOの推奨は安静時の一日の食事の土台についてのものであり、極限的な負荷の最中の行動についてのものではありません。両者は矛盾しません。日常で土台の塩を減らし、長いレースでナトリウムを足す――これは対立ではなく、二つの異なるモードでの賢い管理なのです。
実践でどう活かすか
- 普通の日は土台を低く保つ。 主な供給源は食卓塩ではなく加工食品です。ソーセージ、スナック、既製ソースを減らせば、苦労せずともWHOの目標にぐっと近づきます。
- ラベルはナトリウムで読み、「目分量」で判断しない。 換算を覚えておきましょう。ナトリウム400 mg = 塩1 g。
- 「日常」と「レース」を分ける。 暑さの中の長い負荷は、意識的にナトリウムを足す唯一のケースです。スポーツドリンク、塩タブレット、あるいは塩を加えた飲み物などです。
- 疲れを純粋な水で流し込まない。 数時間に及ぶ距離では、電解質のない水は低ナトリウム血症のリスクを高めます。
- 戦略はトレーニングで試す。 発汗とナトリウムの損失は人それぞれです。大事なレースのスタートではなく、落ち着いた条件で自分に合ったものを見つけましょう。
- 短く軽いトレーニングは「日常」です。 快適な天気での1時間のランニングに追加の塩は必要ありません。ここでは通常の推奨が当てはまります。
まとめ
- WHO: 成人は1日あたりナトリウム<2000 mg(塩<5 g)、2〜15歳の子どもは基準がより低い。
- 実際には世界はその2倍を食べている。1日あたり約4278 mgのナトリウム(塩11 g)(2021年)。
- ナトリウムの過剰は血圧を上げ、年間170万人の死亡と関連する(2023年)。
- 塩の大部分は食卓塩ではなく加工食品から来る。
- 塩の削減に関する一般的な推奨 ≠ 暑さの中の数時間のレースでの行動: 日常では土台を下げ、ウルトラでは低ナトリウム血症を避けるためにナトリウムを補う。
出典:WHO — Sodium reduction. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/sodium-reduction